「愛」には「温かさ」を持ったものと「冷たさ」を持ったものがあります。ここでは、「温かさ」を持った「愛」と「冷たさ」を持った「愛」の違いについて理解して頂くために、それぞれの「愛」の気持ちについて説明します。

基本知識ですが、「愛」には複数の種類があります。それを最初に列挙しておきます。

水の気持ち:「愛」の実践のために「問題解決」を行なおうとする心=「問題解決の心」
火の気持ち1:「愛」の実践のために「笑い」を使おうとする心=「元気・笑い」
火の気持ち2:「愛」の実践のために「闘い」を使おうとする心=「闘いの心」
風の気持ち:「愛」の実践のために「思いやり」を使おうとする心=「優しさ」
土の気持ち:信じることのために何かをやり始めようとする気持ち・やり続ける気持ち=「勇気・忍耐」
金の気持ち:相手を大事と想う気持ちそのもの=「愛」そのもの

以下、それぞれの「愛」について、「温かさ」と「冷たさ」の観点で説明していきます。

 
【水の気持ち(問題解決の心)】

自分が「愛」を抱く相手が「問題」を抱えていて、その「問題」によって相手が苦しんでいたら、その「問題」を「解決」したいと思います。これが「水の気持ち」=「問題解決の心」の「愛」です。

「水の気持ち」は相手に対する「厳しさ」に繋がっていきます。その「厳しさ」が「冷たさ」を持った「愛」です。例えば、恋人がお酒に「依存」をしているとして、その「依存」によって相手がどんどん悪くなっているとします。そういう時、「水の気持ち」は相手の「依存」を取り除こうとし、そのために相手に「厳しさ」を持った発言をすることもあります。

「お酒を飲みたい気持ちも分かるけど、あんまり飲み続けたら体を壊してしまうよ」といったアドバイスをするところから始めて、そういったアドバイスを繰り返しても相手がどうしても「依存」から抜け出せない場合、「お酒を辞めないと、もう別れるよ」といった「厳しさ」を持った発言にも繋がっていきます。こういった発言は決して「温かさ」があるものではなく、むしろ「冷たさ」があるものです。しかし、これは間違いなく「愛」を動機として生まれた発言です。

こういったやり取りが起こることは、この社会では少なくありませんが、そういった具体例から「愛」には「冷たさ」を持ったものもあるということを理解して頂けると幸いです。そして、そういった「愛」の一つが「水の気持ち」であることも理解して頂けると幸いです。「水の気持ち」については、ここに詳しく書いています。

http://junashikari.com/emotion/水の気持ち/

「水の気持ち」はいつも「問題」を見つめます。そして、「問題」を容認しない気持ちがあるからこそ、その「問題」を「解決」しようと思います。「水の気持ち」の根本に「問題意識」があるということを理解することは極めて重要です。何故ならば、そういった「問題意識」が「冷たさ」の原因となっているからです。
 

【火の気持ち(元気・笑い)】

「火の気持ち(元気・笑い)」は、相手に対する「愛」があるからこそ、相手に「元気」を与えることを目指す気持ちです。これは「愛」の実践のために、何かを足そうとする方向性であって、マイナスからゼロを目指す「水の気持ち」の方向性とは逆に、ゼロからプラスを目指す方向性です。「火の気持ち」については、ここに詳しく書いています。

http://junashikari.com/emotion/火の気持ち(元気・笑い)/

「火の気持ち(元気・笑い)」は「問題」を見つめるのではなく、そこで相手に足そうとしている「元気」を見つめています。そういった「火の気持ち(元気・笑い)」の意識が「温かさ」の原因となっています。

例えば、「火の気持ち(元気・笑い)」を抱えた状態で、お酒に「依存」をしている相手と接すると、どのように振る舞うかというと、人によっては「一人で飲んでるんだったら、一緒に飲もう!」と振る舞ったりします。また、お酒を飲ませないことを目指すのであれば、「お酒飲んでるんだったら、カラオケに行こうよ!カラオケの方が楽しいよ!」みたいなアプローチになります。一緒にお酒を飲むことも、カラオケに行くことも、相手に「元気」を与えるための方法です。「火の気持ち(元気・笑い)」はこのような意味で、自分が相手に足すことができる「元気」を見つめています。そして、こういったアプローチは「温かさ」を持った方向性です。こういった具体例から、「火の気持ち(元気・笑い)」が「温かさ」を持っているということをよく理解できると思います。

ここまでを整理すると、「水の気持ち」は「問題」を見つめるが故に「否定的」であり、その「否定的」なスタンスが「冷たさ」へ繋がります。それに対して、「火の気持ち(元気・笑い)」は「元気」を見つめるが故に「肯定的」であり、その「肯定的」なスタンスが「温かさ」へ繋がります。
 

【火の気持ち(闘いの心)】

「火の気持ち(闘いの心)」は自分の愛する人を守るために敵と闘う気持ちですが、「温かさ」を通り越えて「熱さ」を感じるものです。この「熱さ」の原因は愛する者を守るために、何としてでも「敵」を打ち倒すんだという意識があります。つまり、「水の気持ち」が「問題」を見つめ、「火の気持ち(元気・笑い)」が「元気」を見つめているように、「闘いの心」は「敵」を見つめています。

「闘いの心」はそういうものですから、「闘いの心」は「敵」からすると、極めて「冷たさ」を感じるものでもあります。何故ならば、「闘いの心」は「敵」に対しては「愛」ではなく「嫌悪」を抱いているからです。人によっては、自分にとって大事な人の悪い癖を治すために、愛する人に向けて「闘いの心」を使ったりします。その場合は、酷く「冷たさ」を持って接せられたかのように感じます。

例えば、お酒に「依存」している相手に対して「闘いの心」で向き合うならば、「酒なんかに逃げてるようなお前の心の弱さ、なんとかしろよ」みたいな発言に繋がっていきます。このような発言は、酒を飲む相手の心に潜む「依存」「逃げ」「弱さ」を「敵」と見て、その「敵」を打ち倒そうとする意識から生まれます。

こういったアプローチは非常に強い「厳しさ」を持っていますが、動機としては、その相手に対する「愛」があるので、「闘いの心」も「愛」の一つです。「闘いの心」についてはここに詳しく書いています。

http://junashikari.com/emotion/火の気持ち(闘いの心)/
 

・「風の気持ち(優しさ)」

「風の気持ち(優しさ)」は愛する人を支えることを目指し、そのために相手の立場になろうとする「思いやり(想像力)」を使おうとする気持ちです。こういった方向性はとても穏やかな方向性だからこそ、「温かさ」を感じます。お酒に「依存」している人の例だとどのような発言になるかというと、「色々苦労が多くて大変なんだよね。お酒くらい飲まないとやってられないくらい、辛いんだよね」といった発言に繋がっていきます。どうしてこのような発言が生まれるかというと、相手の立場に自分が立つことによって、相手の苦労などに意識を向けているからです。

相手の立場に立たなければ、相手がどのような苦労をどのような気持ちで行なってきたのかについて、本当に理解することはできません。「風の気持ち」は「思いやる(想像する)」からこそ、相手のそういった部分がよく見え、だからこそ「支えたい」という気持ちが生まれます。では、「風の気持ち」が何故相手を「思いやる」ことを目指すかというと、「風の気持ち」は「相手」を見つめているからです。「相手」を真に見ようとするからこそ、「思いやり」をしたいと思います。これが「風の気持ち(優しさ)」の構造です。この構造が理解できると、「風の気持ち」が「温かさ」を持った「愛」であることは理解して頂けると思います。「風の気持ち」についてはここに詳しく書いています。

http://junashikari.com/emotion/風の気持ち/


・「土の気持ち(忍耐・勇気)」

「土の気持ち」は「自分が正しいと信じることをやり続ける/やり始める気持ち」であって、「信念」を見つめている気持ちです。「信念」とは「自分が正しいと思うこと」です。ですから、「土の気持ち」は「光の気持ち」の一つとは言っても、「愛」の気持ちとは言いづらい側面があり、「土の気持ち」を抱いている時は「愛」を抱いているわけではありません。

だからこそ、「土の気持ち」は「冷たさ」を持っています。例えば、お酒に「依存」している人の例だと、「土の気持ち」を抱いていると「お酒に依存するなんて、君は間違えてるよ」といったことを言う形になります。この発言の根底には「お酒に依存しないことが正しい」=「お酒に依存することは間違っている」という発想があります。「土の気持ち」は正しいことを目指す気持ちだからこそ、このような言い方に繋がります。

こういった発言を「土の気持ち」で言う人がいたとしたら、そういう人は「間違っている人がいたら、その人を正してあげることが正しい」という「信念」を持っている人です。相手に対する「愛」ではなく、正しいことを実践しようとするスタンスから、こういう発言は生まれます。だからこそ、「冷たさ」があるものであって、「土の気持ち」はこういった「冷たさ」を根底に持っています。「土の気持ち」についてはここに詳しく書いています。

http://junashikari.com/emotion/土の気持ち/


・「金の気持ち(愛そのもの)」

「金の気持ち」は「愛」そのものであって、「愛」とは「相手を大事に思う気持ち」です。ですから、「金の気持ち」を抱いていると、「相手を大事に思う気持ち」に意識がいきます。そういった意識は「温かさ」を持っていますから、「金の気持ち」は「温かさ」を持ったものです。

「金の気持ち」を抱いた状態でお酒に「依存」している相手と向き合うならば、「お酒を飲みすぎてしまうそんなお前も好きなんだ」といった発言に繋がっていきます。「相手を大事に思う気持ち」があるからこそ、相手の悪いところまでも好きになるところがあり、このような発言へ繋がっていきます。

「金の気持ち」は「愛」そのものだからこそ、「水の気持ち・火の気持ち・風の気持ち」にも繋がっていくものです。それを例文として書くと以下のようになっていきます。

「お前がどうしても大事なんだ。だから、あまりお酒飲みすぎないでね。(金の気持ち→水の気持ち)」
「お前がどうしても大事なんだ。だから、もっと楽しいことしよう(金の気持ち→元気・笑い)」
「お前がどうしても大事なんだ。だから、頼むからその心の弱さをなんとかしてくれよ(金の気持ち→闘いの心)」
「お前がどうしても大事なんだ。だから、お酒を飲みすぎてしまうところも愛したいと思うよ」(金の気持ち→風の気持ち)

※最後の例文が少し分かりづらく感じてしまうかもしれないですが、「風の気持ち」は「相手を支えよう」と思うからこそ、この例文では相手の悪いところ(お酒に依存してしまうこと)も容認することによって「相手を支える」ことを目指しています。

「金の気持ち」が「温かさ」を持った方向性であることに加えて、「水の気持ち・火の気持ち・風の気持ち」への繋がり方も理解して頂けると幸いです。「金の気持ち」についてはここに詳しく書いています。

http://junashikari.com/emotion/金の気持ち/
 

【まとめ】

以上のことを整理すると、以下のような一覧になります。

「水の気持ち(問題解決の心)」:「冷たい」(「問題」を見つめる意識:否定的)
「火の気持ち(元気・笑い)」:「温かい」(「元気」を見つめる意識:肯定的)
「火の気持ち(闘いの心)」:「熱い」(「敵」を見つめる意識:否定的)
「風の気持ち(優しさ)」:「温かい」(「相手」を見つめる意識:肯定的)
「土の気持ち(忍耐・勇気)」:「冷たい」(「正しいこと」を見つめる意識:肯定・否定的)
「金の気持ち」:「温かい」(「相手を大事に思う気持ち」を見つめる意識:肯定的)

大事なことは、これらの「光の気持ち」の性質を理解し、適切な形で使い分けることです。例えば、「水の気持ち」は「厳しさ」に繋がりますが、必要以上の「厳しさ」は有害です。それに対して、「風の気持ち(優しさ)」は「甘さ」に繋がりますが、必要以上の「甘さ」は有害です。ですから、「水の気持ち」と「風の気持ち」は最もいい形で使い分ける必要があります。そのためには、「水の気持ち」と「風の気持ち」の性質の違いを本当によく理解することが大事です。

このような使い分けを6種類で行なうことができれば、本当に素晴らしいです。しかし、実際はこの6種類を自由自在に使いこなせるようにすることはとてつもなく大変なことです。ただ、それでもそういった理想を目指すことはとても大事ですし、こういったことが分かると、人間として生きている内に、我々は死ぬまで心を成長させていくことができるということを本当の意味で理解できます。