「インスタ映え」という言葉が最近は流行っていますが、facebookやインスタに何かを投稿するために何かをすることは、「自己顕示欲」から生まれる行動です。そして、「自己顕示欲」は我々自身を「支配」する力があるので、注意すべき恐ろしい「気持ち」です。

「自己顕示欲」は何をやっていても抱くことがでます。そして、現代は誰もがいつでも自分の写真をSNSに投稿できる時代なので、我々は何をしていても「この写真をアップしたら『いいね!』がたくさん付くかな」という誘惑にかられて生きています。これは、現代が抱えている一つの大きな問題です。

例えば、育児をしていても「赤ちゃんの写真アップしたら私の印象良くなるかな」と思えたり、恋人と食事をしに行くにしても「あそこのランチ、インスタ映えするかも」と思えたり、旅行に行くにしても「どこの国が一番綺麗な写真撮れるかな」と思えたりします。こういう風な気持ちを抱いたことがある方はとても多いと思います。

こういう風な「アイデア」と「自己顕示欲」に同調した状態で生きていると、目の前の相手や目の前の出来事とちゃんと向き合うことができなくなっていきます。「自己顕示欲」は「欲望」であって「自分のため」の方向性、「愛」は「相手のため」の方向性であって、目の前の相手や出来事と向き合うためには「欲望」ではなく「愛」の方向性が必要だからです。そして、目の前の相手と向き合うことができなければ、様々な大事なことを学ぶことができなくなります。

上の例だと、自分の赤ちゃんさえも自分の「自己顕示欲」を満たすための道具と化してしまっていますが、最も「愛」を抱くべき自分の子供さえも自分の「欲望」を満たすための道具となってしまったら、我々は本当に「愛」を学ぶことができなくなります。実際、子育てを写真を投稿するための道具にしてしまっている親は少なくありません。

また、恋人が何を食べたいかを考える「相手のため」=「愛」の態度ではなく、「インスタ映え」する写真を撮るための「自分のため」=「欲望」の態度で何を食べるかを考えることも同様の意味を持っています。そういった態度は「思いやり」の態度とは正反対に「自己中心的」な態度なので、相手に「ストレス」も与え、揉め事のきっかけにも繋がります。

また、旅行とは日本人以外の物の考え方に触れることができる、とても貴重な機会なのですが、そういった大事な機会さえも「自己顕示欲」を満たすためだけの道具と化してしまったら、大切なことを学ぶ機会を一つ失ってしまいます。一般に「旅人」と呼ばれる、世界一周旅行者の中にも、観光地の写真を撮るためだけに旅をしている人は少なくありません。私自身も元々旅人ですが、そういった形で旅をしていても何も学ぶことができず、何のために旅をしているのか分からなくなってしまいます。実際にそういった旅人も多く見てきました。

このような形で、「自己顕示欲」は我々が「愛」を学ぶ機会を奪い、相手に対する「思いやり」を実践する機会を奪い、大事なことを学ぶ機会を失わせる力があります。この文章をきっかけに我々が「自己顕示欲」を抱くことと引き換えに、「自己顕示欲」から何を奪われているのかを知って頂けると幸いです。「自己顕示欲」は我々に「快楽」を与えるものですが、その代償として我々が「自己顕示欲」に奪われているものは、その「快楽」よりも圧倒的に大事なものであって、割に合っていません。

自分が抱く気持ちは自分に定着していくので、「自己顕示欲」を抱けば抱くほど、「自己顕示欲」は自分の中に定着していきます。そうすると、自分が「自己顕示欲」を使っているというよりも、自分自身が「自己顕示欲」に動かされ続けることになります。それは「自己顕示欲」自体に自分の心が「支配」され、自分自身の心の「自由」を見失うことを意味します。だからこそ、「自己顕示欲」を抱くことは極力避ける必要があります。

「インスタ映え」といった「自己顕示欲」という「餌」と引き換えに、自分自身の心を差し出さないように注意して頂けると幸いです。