映画『追憶の森』は富士山のことを理解する上で非常に重要な映画です。心の描写も非常に的確で、様々な重要な要素が込められています。

青木ヶ原樹海は富士山の神様が非常に関与しやすい場所であって、富士山の神様が自殺しようとする者の心に関与し、生と死を分けています。つまり、生きるべき人間には生きることを促し、死ぬべき人間には死ぬことを促しています。この構造は、映画『もののけ姫』でシシ神が行なっている事に近いです。

もちろん、自殺するために来た人間に「生きよう」と心変わりをもたらすことは簡単なことではないので、全てが富士山の神様の狙い通りには進みませんが、それでもかなり関与できることは構造的に明らかです。

富士山の神様は自身の「気」を富士山に宿している神様のことですが、その影響を非常に受け続けているのが、樹海に生える植物達です。だからこそ、そういった植物が生茂る樹海に入るならば、富士山の神様の「気」の影響を強く受ける事になります。

ですから、青木ヶ原樹海が自殺の名所となっていることは必ずしも悪いこととは言えません。少なくとも、都会で自殺をするよりも自分の生と死を青木ヶ原樹海に委ねる方がマシではあります。何故ならば、都会で自殺をすることは「邪気」によって促されやすいことであるからです。

こういった構造があることは「気」の成り立ちを考えると明らかですが、この映画で描かれていることはまさにこのような構造です。主人公は樹海に入り、そこで富士山の「気」の影響を受けて様々な心の動きを起こし、適切な道を発見します。

カンヌでブーイングを受けたという情報を見かけたので、「駄作なのだろうか」とも疑問に思うのと同時に、「渡辺謙とマシュー・マコノヒーの二人が出演を引き受けている映画だからこそきっと重要な映画なのだろう」とも思っていましたが、予想以上の作品でした。改めて、重要な映画が必ずしも評価されるわけではないということを感じました。

この作品を監督したガス・ヴァン・サント、出演したマシュー・マコノヒーと渡辺謙(とナオミ・ワッツ)は、つくづく神々の使いとして素晴らしい仕事をしていると思いました。

善意によって映画を作る彼らのもたらす恩恵を我々はちゃんと受け取らなければなりません。自分としては、この映画の持つ深い意味を日本人に伝えていきたいところです。

また、この映画の深い意味を理解するためには、自分自身が樹海を感じる事が非常に大事になってきますが、一年前から青木ヶ原樹海はいずれ研究すると予感してきましたし、決めています。それがこの冬なのか、もっと先なのか、今の自分には分かりません。研究する時は通うことになるのだろうと思っています。

※この映画はAmazonやU-NEXTなどの動画配信サイトから観られます。

(2020/12/18のFacebook投稿より)